1 神殿更新説
図書「アンデス古代の探求」に神殿更新説が述べられています。
「新しい神殿を造るために、わざわざ埋めているのではないかと気づいたのです。それまで「神殿埋葬」と呼ばれることはありましたが、むしろ「神殿更新」という言葉でこの現象を理解すべきではないかと考えました。
初めは小さくても、更新するたびにだんだん大きくなり、それに応じて建て替えに必要な労働量も大きくなる。そうすると人々を組織しなくてはならないし、彼らの食料を確保する必要もあります。食料生産を増やすために品種改良とか、小規模にしても灌概だとか、いろいろなことを考えるでしょう。大勢の人を呼んで何か月か働いてもらうには、食料管理も必要になります。こうして人間の社会的な組織化が進み、人を動かす知恵も発達するでしょう。それが結局は社会を複雑化していったのではないか。
神殿を建て替えるための労働を、「なんでやらなくてはいけないんだ」と疑問を持つ人もいたでしょう。そういう人を取り込むために複雑な理屈を考えようということで、宗教思想家が出る。
宗教を重みのあるものにするために、儀礼を荘重で複雑なものにする。儀礼を飾る道具、衣装、仮面、冠などを製作するために、特殊な工芸技術が発達する。やがて金製品が作られる。神殿を造り替えるたびに、「今度はもっと大きなものを造るぞ」という流れが、技術、経済、社会組織、宗教など、社会と文化のあらゆる面での変化を引き起こす。それが神殿更新説です。もっともこれは大雑把な発展史観で、細かい実証が必要でしょうし、あるいは発展史観そのものの転換すら必要かも知れません。」
アンデス古代の探求から引用
・メキシコの神殿(ピラミッド)もほとんどが内部に古いピラミッドが隠されていますから、神殿の更新は同じであるように感じますので神殿更新説に興味が深まります。
・イギリスのストーンヘンジ、エジプトのピラミッドなども同じ神殿更新説で把握できるような気もします。
・神殿更新説が発想される社会は多大な余剰生産物、それに依拠した王族・神官・軍隊・各分野専門家集団が存在している体制が既にあります。
・生産力増強や技術発展が神殿更新をテコに行われたと捉えることは「社会のやる気」を明らかにするという意味で画期的だと思います。神殿更新という「社会のやる気」があったればこそ生産力や技術発展が存在したという捉え方はアンデスのみならず他の古代社会の理解にも有効にちがいないと考えます。
・余剰生産物がない狩猟採集社会でも「社会のやる気」が食料増収や技術発展に寄与しているに違いないと類推します。
・縄文社会でも「成長期」「発展期」には「○○という社会のやる気」があったのではないかと想像します。○○の中には構造物としての貝塚造成とか土塁造成とか巨大木造望楼建設とかストーンサークル造成とかが入るのかもしれません。
クントゥル・ワシの第1号石彫(蛇目・角目ジャガー石像)頂上基壇の入口に立つ
Wikipediaから引用
2 クントゥル・ワシ神殿付近の地形3Dビュー
神殿更新説の原点であるクントゥル・ワシ神殿付近の地形3Dモデルを作成しました。
データは日本のJAXAが地球全域をカバーして整備した30mメッシュ
3Dビュー機能はQGIS
いとも簡単に地形3Dモデルが作成できてうれしいというよりも拍子抜けです。
地形3Dモデル
赤丸がクントゥル・ワシ神殿位置 南南西方向を臨む
クントゥル・ワシ神殿遠景 図書「アンデス古代の探求」掲載写真
QGIS画面 傾斜方位図
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